「見ようという眼を持って旅ををすると、普段見えないものが見えてくる。
風景の裏にあるものを見つけ出すには、ただ素直に好奇心さえあればよい。」
そう言って、世界中を旅していたのは建築家・宮脇檀さんだった。
同じように世界中を旅してまわった建築家・吉田桂二さんは宮脇さんより、
少し年上で東京藝大の先輩に当る。ふたりともおおいなる旅人でした。
好奇心いっぱいの旅人は、同時に即席の民俗学者でもある。異国の核心や
本質を本当に知りたいのなら、旅人が一番行きそうに無いところを訪ねるほうが
いいのかもしれない。 この本のまえがきにはそんなような事が書かれています。
宮脇檀さんも吉田桂二さんも、誰もが訪れる観光名所や名建築ばかりを
見て廻っていた訳じゃありません。その記録からは、こんなところに行って、
こんな事を見て、触って、描き写して、そんな事を感じ取っていたのかと
いう事が判ります。街並み全体から小さな細部まで、そしてその土地の風土、
風習、歴史まで・・・
昔、吉田桂二さんといっしょに南仏やスペインのバスク地方へ旅する
チャンスがあったのですが、その時スペインで列車爆破テロが起こり、
治安不安定ということも有り、その旅はまぼろしになってしましました。
その旅のルートは南仏やバスクの小さな街を見て廻るという内容でしたが、
いつか時間を作って行きたいと思っています。
いまとなっては吉田桂二先生といっしょに行く事はなりませんが・・・
ナショナル・ジオグラフィック社から発刊されている、この本はその時に
訪れる予定だった小さな街もふくめて、世界中の小さな街を分かり易い
解説と美しい写真で紹介されています。今は既に観光地になってしまって
誰もが聞いたことがある名前の町から、初めて聞くような街の名前まで、
文化・歴史・芸術に触れる世界の80の街が紹介されていて、いますぐにでも
旅に行きたくなる衝動をかきたててくれる書です。