建築家・谷口吉郎による晩年の傑作としてあまりに有名な東京の
ホテルオークラ・メインロビー。
竣工が1962年。2年後に控えた東京オリンピックを前にした高度経済成長下の
ホテル大型化の嚆矢。2層分吹抜けた大らかで緩やかな落ち着きのあるスペースで
エントランスのフロアレベルから4ステップ(約450㎜程度)低くなった床が他の空間と
一連のなずなのに、ここだけ別世界の様なテリトリーとして空間の結界を
つくり出しています。
ロビーに疎な密度で点在しているソファーとテーブルは高い天井とは不釣り合いな
ほど低く抑えられています。でも、これがなぜかとてもシックリとくる!
このメインロビーの家具のデザインは家具デザイナー・長大作。
建築家・坂倉準三の下で建築・家具の設計を学んだひと。
そして玄関から入って右手になる壁面の壁画は人間国宝にもなっている陶芸家の
富本憲吉の作。富本は奈良県安堵町出身の偉大な芸術家なのだ!
陶芸家ではあるけど、東京美術学校(現在の東京藝術大学)では建築と室内装飾を
専攻していたこともあり、空間デザインやインテリアには大変、精通していたひと。
谷口吉郎という大御所建築家と長大作という一流家具デザイナー、後に人間国宝まで
なった富本憲吉という陶芸家。この三者三様の持ち味が上手く絡み合って“和え物”の
ように創出されたのがこのラウンジ空間だと思います。
“和え物”って「和」という漢字を使いますが、
いかにも“和”のエッセンスを感じる空間です。