時代をリードし新しい時代を築きながら、同時に地域性に目を向けることは
極めて重要な事で良い建築には、車の両輪のように切っても切れない
風土とムーヴメントの関係があるようです。
日本におけるモダニズム建築をリストアップし、重要な建築をして選定
して後世に伝えて行く作業を行っているドコモモ・ジャパンは150の
文化遺産としてのモダニズム建築を選定しています。
その中で沖縄県にあるのは2つだけ。
そのひとつが今回紹介する聖クララ教会。現在は与那原カトリック教会と
呼ばれているそうです。
何回か沖縄には行っていたけど一度も見に行った事が無かったので
一度訪れてみたいなと思っていた修道院を併せ持つ小さな宗教建築です。
那覇から程近い与那原市の庁舎の近く、小高い丘の上に町と海を見下ろしながら
ひっそりと建っている小さな教会堂。
バタフライ型の屋根に穴空きコンクリートブロックの外壁、水平屋根の修道院や
附属保育園など併設の施設と肩を寄せあいながら、この土地の風土と立地から
生まれる強い風を受け流しながら凛とした建ち姿です。
芝生が敷込められた外庭には列柱の様に蘇鉄の木が植えられ、訪れた日も
強い風に耐えながらしなっています。
中庭をもつ平面の組み合わせで、導かれるように穴空きブロックで仕切られた
回廊を通り、礼拝堂にたどり着くプラン。
外観のバタフライ屋根がそのまま室内でも感じ取れる構造で、市街を見下ろす
側は一面のステンドグラスの壁。柔かな光を礼拝堂いっぱいに降り注いでいます。
ちょっと意外だったのは、礼拝堂の一部は桟敷席のような畳敷きになっている。
これはなんでだろう?
修道院の部屋や礼拝堂を取り巻く室内も静謐でつつましやかな空気に
包まれており、ステンドグラス越しに明るい光が降り注ぐ礼拝堂とは
対照的に静かな翳をまとっている印象でした。
この教会の設計者は片岡 献。
米軍施設の建設のために沖縄に来ていたアメリカの設計事務所の
協力を得て片岡はこの沖縄現代建築のエポックメイクとなる建築を
創り上げたそうです。
完成したのが1958年。もう56年も経つわけですが、今も当時も
ここにはいつも強く風が吹いているんでしょうね。