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2013.03.19

近代建築のチャンプ;生誕100年

丹下健三、KENZO TANGEと言ったほうが世界的には通じやすい!?
言わずと知れた日本建築のモダニズム第一世代の絶対的チャンピオンである。
国が国だったら、この人の顔がお札になっていたって全然おかしくない。

東京カテドラル聖マリア大聖堂・内部

その丹下健三大先生、ことし2013年は生誕100年目にあたる。
1913年(大正2年)9月4日の大阪生まれ。少年期は愛媛県今治で過ごし、
東京大学建築科を卒えて、前川國男建築事務所へ入所。師匠の前川國男も
日本を代表する建築家。
その師匠をもものともせず、コンペ(設計競技)に勝ちまくり、東京オリンピックや
大阪万博など高度経済成長時代とリンクして次々と斬新な近代建築を世に
送った建築界の巨人だ。
とりわけ東京オリンピックのメイン会場となった代々木の国立屋内総合競技場は
いまでもまったく古さを感じさせない斬新なデザインとダイナミックな構造。
50年近く風雪に耐えてきた重みはあるけれど、この数年につくられた建築と
いっても通用するフォルムじゃないかしら。
今は体育館として改修して使用されているけど、オリンピックの時はプール
だったんですよね。

国立屋内総合競技場・主体育館外観国立屋内総合競技場・屋根ディテール
僕個人的にはメイン体育館のほうより、大きさは4分の1程度で、どうしても
目立ちにくいのだけれど附属体育館のほうが好き。
メイン体育館の造形も素晴らしいけれど、こちらの小さな体育館は1本の塔屋から
巻貝のように流線型で屋根が掛けられており、その造形美は秀逸そのもの。
こちらは当初から体育館として作られていた。アリーナでの屋内競技となれば
バスケットボールやバレーボールなどだから、東洋の魔女たちはここでプレーした?
(よく分かっていない・・・)

国立屋内総合競技場・第二体育館


同じ1964年に竣工した丹下さん設計の建築でこれまた、独特の姿形と圧倒的な
ヴォリューム感あふれる建築が東京カテドラル聖マリア大聖堂。
(一番最初の写真は大聖堂内部)

鳥になって空から見下ろすと、十字架の形に見える教会堂だ。こちらも
6,7年前に外壁のステンレスパネルが全面リニューアルされたこともあり、
全然古さを感じさせない。内部はコンクリート内放しの吹抜けた大空間で、
トップライトから神々しい光が落ちてくる。仏教の家で生まれ育った僕でも
思わず「アーメン」と十字を切ってしまうのだ。

東京カテドラル聖マリア大聖堂・西側正面東京カテドラル聖マリア大聖堂・外観

銀色に光り輝く外観だが、夕暮れ時は西日を受けてステンレスが焼けたような
キツネ色にそまって美しい。そんなことまで計算されての素材選びがあったん
だろうか?

東京カテドラル聖マリア大聖堂とベルタワー
国立屋内総合競技場エントランス部分
東京オリンピックプール(国立屋内総合競技場)と東京カテドラル。
いまも存在し大事に使われている丹下健三の60年代の代表作にして傑作。
妙に愛着があるのは僕も同じ年の生まれだからか・・・

さて2020年の夏季オリンピックの開催地は今年の9月7日に決まるらしい。
丹下健三の100年目の誕生日から数えて3日後だ。
もし東京に開催地が決まったら、ぜひこの競技場は再生して活用してほしい
と思います。50年以上の月日を超えて再び五輪の会場になるなんて、
そんな建築はいままで無いんじゃないか。そんなふうに時代を越えて
建築物が使い続けられる事はほんとうに素晴らしいこと。ぜひぜひ、そう
なってほしいですね。

一方で東京の丹下建築ではちょっと残念なことも・・・
80年代の丹下さんの名作と言われる赤坂プリンスホテルは時代の波に
飲まれて昨年から解体工事が始まり、高さ140m(地上39階)あった
高層ホテル建築は上層階から解体すると最先端の方法で、だんだんと
縮まって、この春には完全に姿を消してしまいます。
バブルに向かう80年代前半に完成し、バブル期は人気絶頂であったが、
つわものどもが夢の跡だね状態。

60年代の建築が今なお輝きを発するのとは対照的に、まだまだ使える
近代建築・現代建築があっさり取り壊されてしまうとは。
それぞれの建築が建ちあがったときの時代背景がその後の建物の
行く末にも大きな影響を与えています。

 

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