かつて日本の住まいの開放性を支えていたものは、内と外との
中間領域として境を成す深い軒や縁側の存在だった。
この家の外周を取り巻くあいまいで融通性の高い空間が、家の
造作の中で、か弱い存在である障子や薄い板戸、土壁を守り
ながら、開け放てる開口部は明確な用途では呼べない生活の
多様な場面や場所の持つ魅力を生んできたと言って過言では無い。
もっと大げさに言ってしまえば、生活の空間文化の魅力あふれる
多くの事柄が、こうした深い軒下の空間や、その周辺の家の
外でも内でも無い場所で行われてきたんだ。
自然に寄り添う形で習慣化された生活行動で夏期には内外を一体化
させながら微妙に呼吸させ環境を制御し、冬期は外と内を遮断し、
いくつかに層化された室内空間で包み込みながら局所的採暖で
生活を営んだ。局所暖房は家内の温度差を作るから現代住宅では
考え直して行かねばならない部分ではあるが、気候変動の大きい
四季に対応し、住み手の生活行動と練り上げた環境制御によって
暮らしてきた知恵を現代の住宅デザインにもっと活かしていきたいものだ。