2000年の春、務めていた設計事務所を退職して自分の事務所を開設しようと準備
していた頃、建築雑誌に発表されている大阪のMs建築設計事務所の三澤泰彦さんと
三澤文子さんの住宅作品の写真に必ずと言っていい程、登場するある一脚の椅子が
とても気になっていた。
当時はその椅子が誰がデザインした椅子で何と呼ばれている椅子かも知らずに、
どこにアクセスすればその椅子が何と言う椅子で誰がデザインしたもので、はたして
どれくらいのお値段がするものか調べる事が出来るかな~と思案していたのだが、
よ~くよく考えると、自ら設計した多くの住宅のほとんどのダイニングチェアとして
この椅子をチョイスされているのだから、三澤さんご夫妻が自分たちでデザインされた
ダイニングチェアではないんだろうか?と思い、思い切って事務所に電話して
聞いてみたのです。(電話口に出られたのは確認はしていませんが、その後お会いし、
その声・しゃべり口調を知って、思い起こすと間違いなく三澤泰彦さんだったろうと
思います。)
僕の想像は見事に外れ、この椅子は日本を代表する工業デザイナーで木工作家
でもあった秋岡芳夫氏がデザインされた『男の椅子』で日本人の体型と日本の生活
様式に合せて座を低く、そして座面を大きくとりその上であぐらをかく事もできるという
ことで『男の・・』というネーミングが付いている事、4本の足が45度振っている事で
使用上どんな利点があるかという事や『モノ・モノショップ』で購入できるよという事、
他にも昼寝のできる『女の椅子』(現在では『家族の椅子』にネーミングが改められて
います。)というものもあるのだということなど、いろいろご丁寧に教えて頂き、
とても良い椅子だからぜひ使ってみたらいいよと薦めてもらったのでした。
(アリガトウゴザイマシタ)
たった1脚の椅子で僕のハート❤をわしづかみにしてしまったこの秋岡芳夫という
人はどんなデザイナーなのだろうと、その後調べてみた。残念にも既に1997年に
亡くなられていたのでお会いする事はできませんが、著書など拝読させてもらうと
その先見性には感服です。40年前、まだまだ右肩上がりの高度成長を世間が
夢見ていた時代にすでに現代の問題点をすべて見透かしたような発言提言の
数々。人口問題、環境問題、エネルギー問題etc。
こんなスゴイひとがいたなんて!
今、そんな物凄いデザイナー秋岡芳夫氏の没後初となる回顧展がホームグランド
だった東京目黒の目黒区美術館で開催されています。
時間をつくって見てきましたが、2時間くらいしか時間がなかったので、とても
じっくり見れなかった。デザイン好きの人、木の好きな人、モノ好きな人必見です。
ぜひ足を運んでみられてはどうでしょか。12月25日(日)クリスマスまで開催
されていますよ。(関西にも巡回してくれたら、また見に行くんですけどね。)
『DOMA 秋岡芳夫 展』