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2011.06.07

生物多様性の生活空間・場所~田園住宅のススメ

昨年の秋、生物多様性条約国際会議(COP10)が名古屋で行われたことは記憶に
新しい。生物多様性は人類の生存を支え、恵みある暮らしを作りだす最適の容態を
もたらすもの。
1992年に「生物多様性条約」が制定され、日本を含む世界の190カ国とECがこの
条約に入って多種多様な生物の一体的な生存の空間・場所を保全しようという訳
ですが、名古屋の会議はその国際会議の通算10回目だった訳。地球全体の問題
という大きい話から一転、話はちっちゃくなりますが、我家の空間・場所も実に生物
多様性の生活空間。

生物多様性住宅1

人間4人に定期的に仔犬一匹。庭先の果樹の実を食べにくるムクドリやメジロ、
キジバトなどの小鳥、もちろんスズメやカラスも来るし、ツバメもやってくる。
ほーほけきょとウグイスが鳴く事だってある。花木の蜜を吸いにやってくる蝶々やら
ミツバチ。ある大手有名ハウスメーカーは鳥たちと蝶々のための樹木を植える
キャンペーンみたいな事を展開されておられますが、我が事務所も負けてません。
春から夏にかけてはヤモリ、蜘蛛、蟻、ミミズ、ダンゴムシやいろいろなケムシ。
名前も分らないような小さな虫を狙ってトカゲなんかもやってくる。あんまりというか
完全にご遠慮願いたい蛇やムカデなんかも年に一度や二度は出くわす事もある。
こいつらは本当に勘弁願いたいのだが・・・ 梅雨時にはナメクジがデッキの上を
這っているし、夜になると蝶々ならぬ蛾が灯りに寄ってくる。

生物多様性住宅2
夏の昼間は蝉の鳴声で電話の声が良く聞こえない。雨の日はカエルの合唱。
網戸にはカナブンがいっぱいくっついている。トンボが室内に入る事もあれば
ヤモリが迷い込むこともある。
外へ出れば嘘やろ!と思うくらいの蚊がいっぺんに寄ってくるので蚊取り線香と
虫よけスプレーは必需品。
野良猫が濡れ縁の上を闊歩しているし(これが本当の「キャットウォーク」[建築の
世界ではこの名で呼ばれる点検通路がある。])、他所のペット犬が迷い込み家の
廻りを走っていた事もあった。(これこそ「犬走り」[建築の世界ではこの名で呼ば
れる土間がある。]
まぁ、田舎と言えばそれまでなんですが、ほんとうにいろいろな生物が共棲して
いるのです。

生物多様性住宅3

樹木だって、庭師さんに植えてもらった高かった庭木より、勝手に生えてきた名前
も分らない雑木のほうが大きく育ち、芝生のグリーンカーペットはいつの間にやら
地苔と雑草の絨毯に変わってしまった。
こう書いていると、とんでもない所に住んどるなと思われるかも知れないが、
そんなに居心地は悪い訳では無いのですね。かつて、緑の建築家と呼ばれた
巨匠・石井修さんの目神山の家(ご自邸)にお邪魔させて頂いた事があったが、
緑の中に埋もれて暮らす(石井修さんは建築に外観は不要と言い、建築を緑の中に
埋没させる事が得意だった。)ことはいい事も多いと思いますが、虫とか蛇とか嫌な
事も多いのではありませんか?と質問したところ、「それが本当の自然ですよ。
今時の人は都合の良い事だけを欲するからいけない。人間だけが気持ちのいい
自然なんて無いですよ。嫌と思う虫や蛇がよってくるような場所こそ、ほんとうに
素晴らしい場所だと思うよ。」というような答えが返って来ました。「さすが!まさに
おっしゃる通りです。」と思いながら、なかなか大変やな~とも感じましたが人が
暮らす事、生きて行く事はまさに格闘であり、その生存のための最適の姿こそ
「自然との共棲」なのです。

私の最近の理想の住まいは、程良い自然環境の中に埋もれるように身の丈に
あったコンパクトの家とその周辺は、昔の農家住宅のように自給できる菜園の
スペースなど暮らしと不即不離な屋外環境を併設した住まい。
田園建築というか田園住宅というか、住宅に限らず全ての建築環境がそんな
自然と一対になった空間なら良いと思うのです。

現在、計画しているある住宅は法的条件が建蔽率15%、容積率30%という
条件。普通の住宅地や都市部では超厳しい条件ですが、実は土地(敷地)と
建物のバランスはこれくらいがちょうどよい様に思います。
そんな場所に住まいを建てようと思う方が居られれば、ぜひぜひ!

生物多様性住宅4
生物多様性住宅5

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