ダディーズアットホーム
HOME » 旅のすすめ » 伊根の舟屋・歴史遺産の町並みを歩こう001

2011.01.23

伊根の舟屋・歴史遺産の町並みを歩こう001

「重要伝統的建造物群保存地区」という制度をご存知ですか?
歴史的な旧い町並みは日本の伝統的な住居形態とその集住の様式を現在に伝える
貴重な文化遺産であると考えられます。文化財であると捉えるならば、その町並み、
それを構成する建造物、そしてそこで営まれる日々の生活を守らなければなりません。

そうした集落・町並みについて昭和50年の文化財保護法の改正により、周囲の
環境と一体をなして歴史的な風致を形成している伝統的な建造物群を周辺環境を
含めて保存する制度が設けられました。それが「重要伝統的建造物群保存地区」。
略称「重伝建」。2010年度時点で全国で約90の伝建地区が選定されています。

いままで小生が足を運んだ「伝建地区」をゆる~くご案内したいと思いますので
どうぞ、ご一緒に!
まず第1回は京都の北部、丹後半島に位置する伊根町伊根浦の舟屋群へ
行きましょう。

伊根舟屋1 (1)

「伊根の舟屋」で有名なこの場所は意外と最近になって「伝建地区」に選定されて
います。平成17年度の事です。僕が初めて訪れたのは、もう15年ほど前のことに
なると思います。以来、何度か訪れているのですが、この冬は初めて冬場に訪問
しました。伊根湾をぐるりと取り囲む舟屋は約230軒にもおよぶそうです。
伊根は漁村で舟屋と呼ばれるのは漁に使う舟を収納する小屋のこと。
狭く曲がりくねった道の海岸線に水辺に張り出すように舟屋は建っています。
大きさも間取りも様々。でも共通しているのは海に対して舟屋は「妻入り」なのです。
下の写真を見て下さい。ほとんどそうでしょう!実際に町並みを歩いてみるとそうでは
無いものもあるのですが・・・
これとは逆に道路を隔てた山側には母屋があります。母屋と舟屋は道路を挟んで
不即不離に一対です。このふたつで一軒の家。これが伊根の集落です。
いまでこそ、アスファルト舗装された道路ですが、この道空間は実は昔は住宅の中庭
みたいなものだったはずです。生活庭ですね。農村でいう母屋と離れ(あるいは納屋)
の関係が伊根の母屋と舟屋の関係な訳です。

伊根舟屋1 (2)

伊根舟屋1 (3)
道路が生活庭・作業庭だったとすれば、それが延々と横に連なっているので、
各戸へのアプローチはどうしたのかって?
それは前にある海です。海は漁師にとっての仕事場であることはもちろん、ここでは
一般的な住戸と敷地にとっての前面道路な訳です。この集落は「向こう三軒両隣」の
「向こう三軒」がなく「両隣」だけのコミュニティなんですね。
伊根は海岸線まで険しい山が迫っていますから、大きい通りは無い。鉄道も走って
いないから、昔から陸路はたいそう不便だったはずだ。バスは一日一度来る!って
感じです。(実際はもっとバスは走っていると思います。)
水路が宮津や舞鶴など対岸の町との主な連絡の手段だったはず。
そう考えると、この集落は半島の内側にあり入江の中で、後ろを山で囲われ前には
海が開けている。しかもその入江の出入口には青島という島があって、湾の中は実に
穏やかな海なのである。実際に干満の差が小さく、荒波を小島で塞いでいる湾内で
あることがこの「舟屋」という特異な集落を形成できた要因であることがわかるのです。

ENCLOSE(囲う事)とDISCLOSE(開く事)という空間概念を見事に体現した
集落であることが見えてきます。

まだ、訪れたことが無い方はぜひ行ってみて下さい。

伊根町公式hp

伊根町観光協会

 伊根の舟屋
「妻入り」の舟屋群。舟屋のサイズや作り方には本当に様々なタイプがある。

伊根の舟屋

伊根の舟屋
昔は全てが小型の木造船だったはずが、現在はFRP製の船に変わり大型化されて
いるので、舟屋の中に格納できなくなってきている。

伊根の舟屋
伊根の舟屋
伊根の母屋

「舟屋」と道を隔てて建っている「母屋」。こちらが主たる生活の場であるが、現在は
舟屋が離れとして居室になったり、車のガレージであったり普通の倉庫であったりと
随分、様変わりしているように思える。

 

←前のページへ次のページへ→

Add to Google Yahoo!ブックマークに登録 RSS
特に業務エリアは決めておりませんが、奈良県(奈良市、生駒市、大和郡山市、香芝市、橿原市ほか)、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、滋賀県、三重県など近畿を中心に ご縁に任せております。
一級建築士事務所 中尾克治建築設計室
〒630-0233 奈良県生駒市有里町117-19
telephone. 0743-76-2744 facsimile. 0743-76-5988