住宅の窓・開口部~日本の風土と建具デザインと居住環境Ⅲ
ここで古典建築の中で魅力的な建具のひとつに触れてみたいと思います。
高松市街の栗林公園内にある掬月亭(*1)には開放感と軽快さの極みと言える
空間が存在します。みなさん行った事ありますか?
室内から屋外へ無限定に広がる融通無碍な開放空間は日本建築の特徴であること
は先にも述べましたが、この建築も例にもれず建具を取り払うと庭が三方に広がり、
室内は庭の一部と化すのです。しかし、ここで注目したいのは広縁の外に設えられた
雨戸であります。その雨戸の動きなのです。引戸というものは通常、水平に直線運動
する物なのですが、この雨戸は直角にも動く奇想天外な建具であるのです。
どんな動きをするのかって?
雁行平面をぐるっと一周包みこむ雨戸は全部で128枚あり、毎朝、開放されて戸袋
(建具部屋というくらいのスペースがある部分もある)に消え、夕方になるとまた取り
出され、建物は貝のように閉じるのです。生活空間ではないけれど、このような毎日
の所作は住宅建築に通ずるものがあり、こんな変幻自在な有機的な建具を現代建築
にも活かしていく事は一考の余地があるように思うのです。この菊月亭の雨戸に限らず
古建築に見る数々の知恵と工夫は建具に限らず、現代の住空間を豊かにすることは
間違いの無いことでしょう。
香川県高松:栗林公園ウェブサイト