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2010.04.29

住宅の窓・開口部~日本の風土と建具デザインと居住環境Ⅰ

          序

開口部は時々刻々と変化する内外の空間を制御する変動的対処の役割を
持ち、透過と遮断、または開放と閉鎖、という相矛盾する二律背反の役割を
担っています。

日本建築における開口部と建具は、欧米の建築に見る壁の穴とその穴塞ぎ
ではなく、構造架構や間取りと不即不離の関係にあることは、それらがどの様
な発達の過程を経てきたか振り返れば明らかです。1間おきに柱が立つ架構
の制約が、もっと開放的にという要求から、2間おきの架構形態に発展し、
建具が柱間から外されて、さらに開放性を高めていく過程が読み取れることを
伝統建築や戦後住宅の変遷が教えてくれます。(*1)

菊月亭(高松・栗林公園)

開口部という呼び名そのものが日本建築の作り様からすれば、いささか的を
得ていない部分もあるのですが、開口部という言葉が成り立つには、壁で囲ま
れた空間という概念が先ず前提としてあり、その壁に穴を穿つからこそそこが
開口と呼べるのであり、壁の多い欧米の建築ではそれが普通であるかも
知れません。しかし元来、日本の木造建築、すなわち軸組工法による建築は
柱と梁を架け渡して組まれた工法であるがゆえにそもそも開放的な作りであり、
そのほとんどが開口部となり壁が補助的な存在として配置されているといっても
過言ではないのです。建具を外せば小間として区切られていた空間が広間の
ように広がりを見せます。

これが日本的空間の真髄であり、このような無限定の空間はその使用目的を
限定しません。日本の伝統的な建築において開口部とは“間戸(まど)”、
すなわち柱と柱の間に戸を入れることであり、とりわけ遣戸(引戸)でありました。
この引戸は開口量が自由に調整でき、開閉の際に面外に建具がせり出す事が
無いため、丁番をはじめ複雑な支持金物や開閉機構を必要としない単純明快
な作りです。つまり、日本の建具は元来レール、戸車、鍵など金物が一切使わ
れていないばかりでなく、それを多用した空間は融通無碍な無限定空間を創り
出せた訳です。このような建築の作り様の違いは、気候風土の違いによることは
言うまでもありません。居住性を向上させるため欧米では冬場の寒さを防ぐ
目的から厚い壁に小さな開口部を求め、日本では夏の蒸し暑さと多雨に対処
すべく、厚い屋根と深い軒、そして風を通す事を第一義に開放的な空間が
求められたのです。西洋建築が壁の建築であるのに対し、日本建築が屋根の
建築たる所以です。建築の作り様はその地で営まれる生活の時間軸の堆積に
よって決定されるのであり、建築の質は開口部の作り様と建具のデザインで
決まるといっても過言ではないのです。
さてさて、これからちょっと日本の住宅における開口部の有り方とその建具
デザインについて考察してみたいと思います。

                                                                                              <続く>

注記:(*1)など*印の補足説明をブログ「普通の家 普通の暮らしを求めて」
           記載していきますので合わせてご覧ください。

 

 

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