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2010.04.15

3’×5’×2’の抽斗が多いという事

3間と5間で15坪、それが2層重なって30坪。一般的な住宅の標準タイプのひとつと
言える。30坪あれば4~5人の家族が暮らすのに十分な空間がつくれるし(これより
小さくなると収納率が少ないとかいろいろと出てくるのですが・・・)外構も含めた総予算
から逆算すると仕様にもよるけど坪数をこれくらいに抑えないと予算が厳しいという
建築主が多いということもあるのでしょう。巷に建つ多くの家の多くがこの30坪内外だ
と思います。これくらいの家が市井のひとびとが当たり前に働き、当たり前に暮らす
ための当たり前に建てる普通の家の大きさなのだと思います。

これくらいのサイズだとよほどの変形敷地でも無い限り、たいていの宅地にはすっぽり
と収まるし、3.5間×4.5間など少々サイズを変えてもそれほど坪数に関係ない。
坪数に影響しないということはコストがグンと上がる事は心配ないし、同じような仕様で
あれば1,2階の大きさが同じということは構造的にも有利な方向へ働く事が多く、下屋
(2階が乗っていない1階部分の屋根のこと)が無く、大屋根だけなのでコスト的にも
有利であるし雨仕舞も単純になる。つまり雨の多い日本において雨漏り事故を減らす
方向に繋がる。家形が単純明快なので大屋根も切妻なり寄棟なり単純な小屋組み
形態で完結するのでこれまたコスト、構造、雨仕舞すべてに有利ということ。
四角い家に勾配屋根となり、ひとつ間違えば創意工夫の無い面白みに欠ける家に
なってしまうので、それをどう工夫し如何に内部と外部を一体的に繋げるかが設計者の
腕の見せ所となる訳です。

スケッチブックから

さきほど30坪内外の家が巷に多いと書きましたが、それらの多くに建て売り住宅と
それに類似するようなシステムで建てられる家があるのですが、これらは決してこんな
に単純な架構を考え、単純な屋根形をしているわけではないのです。なぜあんな形を
しているんだろうという不思議な屋根形(家の平面形が複雑になると屋根型も複雑に
なるのは当たり前)をしていたり、うまく表現できませんが骨組みがどうなっているのか
なかなか想像できないような形の家が多いのですね。
何かというと総予算が決まっていて逆算から坪数が決まり(そういう家は仕様は
たいてい決まっています)、あとは売りやすいように間取り(いや部屋並べ)を考え、
ちょっと他と差別化するためにいろいろ形を変えたり部分的に色や仕上材を
変えたり・・・  発想の視点が全然違うのですね。

スケッチブックから(3.5間×4.5間のエスキース)

スケッチブックから(3間×5間の外観イメージ)
標題に書いたように3間×5間×2層の30坪をひとつのベースと考えておけば、この
サイズの中だけで完結させることも出来るし、敷地に応じてアレンジすることも出来る。
もう少し大きい家になるときはこのベースに1階部分を張り出していけば良い。
バルコニーなんかをつけたい時も同じ事。道路が東西南北どこに来ても、隣地や
道路と高低差があろうと、間口のほうが大きい場合、奥行きの方が大きい場合、
いろんな状況に応じてその時の条件にぴったりと収まるプロトタイプを多く持って
いると、計画する時に楽になる。
3’×5’×2’の抽斗が多いという事は設計する者にとってとても大事なことなのです。

スケッチブックから(3間×4間のエスキース)

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