東洋民俗博物館~愛しべきピンク爺さんの素晴らしき蒐集の数々
東洋民俗博物館は大正15年開園のあやめ池遊園地の一角に昭和3年5月に開館
しています。当時流行したアールデコ調の洋館でエントランスを中心に両翼を広げた
シンメトリーの平面プラン持つ鉄筋コンクリート造の建築。
開館当時は開閉式のガラス張り天井があり、自然光で展示物を見学できたそう
ですが、その後の台風被害で修繕した際にガラス屋根は無くなっています。
壁面や展示室の陳列ケースには古代エジプトのロータス文様を想起する装飾が
施され、なかなか洒落た設えのモダンな建物です。
エントランス両脇のステンドグラスは直線が基調の幾何学的デザインの中に、
よーく見ると右側からグラマラスで艶っぽい曲線が「おいでおいで ♡」と足招きする
ように伸びています。
これは豊満な若い女性の脚がモチーフなんだとか・・・ なんで???
実はこの博物館は世界中を訪ね歩き、性崇拝を中心に各地の民俗を探求したという
九十九黄人(本名:九十九豊勝)が蒐集した膨大な民俗資料を保管・展示している
私設の民俗博物館なのです。
そのコレクションときたら、何故こんなモノまで集めちゃったのかと思えるチン品の数々。
そこらへんにある○○秘宝館なんていう中途半端で怪しげな館とは一味も二味も
違った、筋金入りのピンクじじいの館なのだ!おっと誤解の無いように言っておき
ますが、れっきとした由緒ある民俗資料館でございます。
ここには月並みを排し、まがいものを嫌い、正統を尊び、本物を愉しみ、遊び心を
忘れず、事物をありのままに観察し想像力を巡らせ本質を見抜いた黄人の
精神が宿っています。
(注)この文章は(一社)奈良県建築士会の会報誌に掲載していただいた内容を筆者が
一部、加筆修正したものです。