障子を使うとすぐ和風ですねとか言われたりします。畳の敷いた部屋は障子が
入っていて、フローリング床の部屋ならカーテンかブラインドかロールスクリーンと
いった具合で分けていませんか。大体、そんなことで和洋を区別するというのも
何とも単純で曖昧なことかも知れません。所詮○○風なのです。
本当の“和”でも“洋”でも無いのではないでしょうか。
(写真は吉野の福西和紙本舗のうすじま和紙という手漉きの和紙を貼った障子。
写真で判らないですが、やや生なりがかった風味で楮の繊維が長く残り透ける
ような透明感が特徴。それを両面に貼った太鼓貼り障子。組子も太めで15㎜の
無骨な姿形のデザイン)
紙貼障子を採用する判断は和とか洋とか単純な判断で選んでいるのでは
ないのです。
紙貼障子というのは光をコントロールする道具として大変優れていて、和紙に
透かされた光は優しく散光し、淡く室内を包み込んでくれます。光の方向に
よっては影が写り込み、障子の向こうの気配を感じ取ることもできる。
自然紙だから調湿機能をもっているし、断熱効果が高いという利点もあり、
開閉によって重なった和紙で光の強さも変わり風景も呼び込むことができます。
大変優れた建具であることは古今いろんな建築家たちが既に証明して来ました。
予算が最大の要因ですが、ほとんど場合は機械漉きの大量生産の大判の
障子用和紙を使用する事がほとんどです。でもチャンスがあり手漉き和紙を
使用できるときは捨てがたい魅力があって、何かと言うと“耳”。「えっ!ミミ?」って
耳を疑うかも知れませんが、顔の両横についている耳じゃありません。
和紙の“耳”というのは紙の端っこのこと。機械で裁断したシャープなエッジ
ではなくて、漉き簀の端に当たってモケモケというかモヤモヤ(表現が難しい)と
なった端部のこと。これを活かさなくちゃ、せっかく手漉き和紙をオーダーした
意味が無くなってしまうといって過言ではないのです。
四方向全てに耳が付いている和紙を「四方耳付き」と言い、二方が
機械断ちの場合は「二方耳付き」と呼ばれます。
この耳を活かして組子に合せて貼り込んだり、組子から外れる所で貼り継ぐ
場合は、先ず作業台で貼り合わせて大判にしてから建具に貼り込んだりする
手間がかかり、サイズを調整するときも和紙に水を付けて手ちぎりするのです。
手間をかけてもらった分、愛着も高まります。かつて日本の家は木と紙で
できていました。植物に由来する素材は建物を呼吸させ、湿度や温度を
調整していた訳ですね。家も生きている訳です。生きたものは世話がかかる。
世話がかかるほど愛すべき存在になる。これ自明の理。