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2011.01.06

WEB講座:坪単価の不思議

家を建てるにはなんぼかかりまっか?(いくらかかりますか?)

これから家を建てようとするとき一番気になる事といったらなんだろう。
プラン(間取り)?デザイン?仕上げの素材?どれもと~っても気になる
でしょうけど、そんなこと、あんなことみんなひっくるめてやっぱり気になる
事といえば「お金」のことでしょうか。
「いったいどれだけかかるのだろう?」「どれくらいお金をかけたら、
どの程度の仕上がりになるのだろう?」と建築費のメドをつけるためのひとつの
算定基準として“坪単価”という基準で比較・検討することがあります。
「この家は坪いくらです!」とか「うちの家は坪○○円かかってん!」とかいう
会話よく聞きますよね。

坪単価の不思議

さて、じゃあ坪単価っていったいどんなものなのでしょう。これから家を建てようと
する一般の方(建築を専門にしていない人全般)は意外と解っていない事が多い
ようにも思います。今回はその“坪単価”を解明してみたいと思います。

簡単に言えば1坪あたりにいくら費用がかかっているかと言うことですが、まず
1坪とはどのくらいの大きさなのでしょうか。“坪”というのは昔使われていた
尺貫法という度量衡の面積単位で一間×一間(一間とはメートル法でいうと
≒1,818㎜)の広さということになります。約3.3㎡に相当する訳です。
もうちょっと判り易く表現すると畳2枚分の広さということです。つまり30坪の家は
畳が60枚敷き詰めた広さっていうことなんですね。
そんな風に表現すると感覚的に判り易いので建物や土地の広さを表すときは
現代でも良く使います。(○○坪と言われると、広いとか狭いとか瞬時に判断が
ついても○○㎡と言われると中々ピンと来ないものなんですね。)

話を“坪単価”に戻しますと、その家に費やした建築費をその家の大きさ(広さ)の
表現である延べ坪数で割ったものです。述べ坪数30坪の家の建築に工事費
3000万円かかったとしたら、坪100万ということです。どうですかみなさん、
坪100万の家といったら高い家か、そうでもないか。
近頃は坪単価30万円なんて触れ込みの広告なんかよく見かけませんか?
坪30万の家はどうでしょうか、安いですか?そもそもその30万円にはどこまで
含まれているのでしょうか?その辺がグレーゾーンですね。
その昔、家が同じような工法と仕様で建てられていた時代は、この坪単価の比較で、
これから家を建てようとするときの有効な目安になったものです。
しかし工法や構造の多様化や、仕上げや設備といった仕様の複雑化、そして地場
の小さな工務店からTVで有名人気タレントがCMに登場する全国区のメーカーまで
作り手も幅広くなった現代の家作りでは坪単価の扱いはばらつきも大きく、単純比較
できない状況です。「工事費」というものの内容についても「坪数」の算定についても
何も基準が無いということもあって、坪単価の内容の根拠が曖昧なわけです。

坪単価の不思議

例えば工事費でいえば、あれは別途、これも別途、それはオプションといった感じで
工事費に含まれていない事はよくあることです。
カーテンやブラインドはおろか照明器具も網戸・雨戸も別途なんてこと珍しいことでは
ありません。逆に外構や置き家具などはたとえ本工事で予算書に入っていても、
それは坪単価の算定から外すのが正等な算定方法です。
ほらほら、ちょっとややこしくなってきましたね。先にも述べたように“坪単価”と
いうものは、そもそもかかった工事費を延べ坪数で割り算してでてくる数字です。
それがいつの間にか見積もりをしやすいように、あるいは建築主に説明しやすく
判り易いように、大手の住宅会社やメーカー住宅を中心に(建売住宅もそう)まず
坪単価があって、そこに建てる家の広さを掛け算して総予算を算出したり、工事費の
メドをつけるために利用しだしたのです。つまり作り手のほうは人の気持ちを惹き
つけるために坪単価は安く設定したほうがいいわけです。住宅の広告なんかで
坪単価が高くかかる事を宣伝している広告なんて無いでしょう。
安売り合戦になっているのです。
安く家が建てられるのは良いことですが、安い以上に質の低い家が建ってしまう
こともしばしばです。
そこをしっかりと見極めていかなければならないわけです。メーカー住宅でも
工務店でも、「うちは坪単価○○です!」というような売り文句がでてくる場合は
その単価に何が含まれていて何が含まれていないのか、ちゃんと理解してから、
その金額が高いのか安いのかを判断しなければなりません。

ちなみに、私の事務所でいう坪単価に含まれていないものは、先ず外構費用。
植栽やガレージなどの付帯建屋といったものから雨水や雑排水設備など。敷地の
広さや形態によって外構というのはかなりばらつきが出ます。
駐車スペースだってコンクリート造のガレージを造ることもあれば、アルミの
カーポートの場合もある。青空駐車だってある。平らな敷地で道路から段差無しで
アプローチできることもあれば、高低差があり擁壁や階段を造らねばならないことも。
それらを一律に坪単価として含んじゃったら高い安いという目安には乗ってこない。
設計者も自分が設計している建築はこの仕様でどれくらいの費用がかかるかは
知っておきたいし、知っていなければならないので出来るだけ過去の実績から
比較できる基準をつくります。
公共下水が整備されていない地区で浄化槽を設置しなければならないときも
浄化槽は坪単価算定からは外しています。屋内の内容では、後から設置するような
置き家具は別。
その家にしか無いような特殊なもの(そんな設計をしたことは無いですが・・・)が
ある場合など、それは別にするでしょう。
基本的には住い手が後から購入して置くようなもの以外は全部含んで、建築本体に
かかった工事費用を述べ坪数で割り算したものとなります。
カーテン・ブラインドといった類から照明器具、造作家具などもちろん含んで算定する
わけです。

どちら様も先ずは先立つものがあるわけですから、依頼者には想定している予算を
お聞きしますが、そのご予算ではご希望の内容は難しいのでは。とか、もう少し
小さく造りませんか。などとアドバイスもさせていただきます。

あっ、それと設計監理料という私達、設計事務所がおまんまを食べていくための
報酬はもちろん含まれていません。工事費用とはまったく別物ですから・・・

基本的は新築物件で外構工事や付帯施設を除いた、建築本体工事にかかる総予算で
その本体工事の中に、その家にしか無いようなかなり特殊性を持っている場合はその
部分の費用を抜いた上で、延べ面積(坪数)で割って算出した金額が“坪単価”であると
考えたらいいと思います。
(しかし、巷に溢れている坪単価がすべてそんな基準で出されたものでは無い事は
良く承知しておいて下さい。)

僕が思うところの、「いい木造住宅」(それがどんな住宅なのかということは、ぜひ生の
声を聞き、輝く瞳を見てもらいながらお伝えしたいと思います。一度膝を突き合わせて
じっくり語り合いましょう!)を作ろうと思うと、仕様や規模にもよりますがやはり坪単価は
70~80万くらいが最低ラインになるだろうと考えています。

坪単価の不思議

では、安めの“坪単価”を設定して質を落とさないには、いろんな建設会社はどんな
工夫をているのでしょう?
・まず標準仕様というものを設定している。(決まった材料で決まったやり方で
 施工する。 イレギュラーがでたら割高になる。)
・年間安定してかなりの棟数を施工している。(スケールメリットで単価を下げて
 いる。) 大手住宅会社やメーカー住宅はこれらに該当し、坪単価を設定している
 わけです。

小さい工務店などの作り手や設計事務所は基本的にその都度、建築主の要望や
いろんな条件を加味して見積りすることが多いので坪単価という概念でいうと高く
なると思います。

 最後に延べ面積(延べ坪数)と施工面積の違いを説明しておきましょう。

一般的に建築物の大きさ広さを現している面積には建築基準法でいうところの
延べ面積や建築面積が表記されています。“坪単価”を算出する延べ坪数には
吹抜の面積や開放性が高い玄関ポーチやバルコニーといった部分は基本的に
含まれていません。
しかし施工者サイドの考え方によっては吹抜だって床は無いけど壁・天井はあるし、
床が無い代わりに工事のとき仮設の足場を組まなければならないので床面積に
出てこないからといって無料で施工できるわけではありません。(当たり前ですよね)
ポーチやバルコニーなども同じことです。だから施工面積といって、そのような部分も
含めて面積を算定し、その面積で工事費用を割って坪単価を算定しておられる
会社もあります。

こんな風に“坪単価”ひとつとっても話は尽きません。家づくりはと~っても奥が
深いのです。(だから愉しいのですが)
ずいぶん長い話になったので、今回はここまで。

 

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