大徳寺孤篷庵忘筌、この名前を聞いてゾクッと来ない建築家はいない!?
きれい寂の小堀遠州のエッセンスがびっしり詰まった書院風茶室。
京都の大徳寺孤篷庵は一般拝観謝絶だから普段は基本的に見学できない。
見れないものを見たいと思うのは人の性。いつでも誰でもその空間を体感
できるわけじゃないから余計に神聖化される。
本堂(方丈)と書院、茶室忘筌からなる孤篷庵は広い大徳寺境内の西北の
外れにある塔頭のひとつ。本堂から西奥の書院に向かう途中に位置する
忘筌は手前座の一畳を含め九畳の広間に三畳の相伴席を備えた茶室。
床は幅一間、奥行き半間の空間だ。「八景の庭」(近江八景との事)と
称される西側の庭に面した広縁・落縁が秀逸。建築関係の書物には必ず
この部分の写真が写っている。(茶室内よりも有名なのだ)
中敷居を入れ、その上部には明り障子が入る(4枚の引き違い)。下方は
開放されていて西陽を遮りながらやわらかい間接光を茶室内まで導き、
茶室の障子を開いた時は視線を自然に下方に導く。
そこには手水鉢や石灯籠などからなるつくばいの風景を切り取って室内と
一連のものとしている。中敷居の高さの設定は西陽を遮る高さでは無く、
茶室に入るための潜りの高さからである。つまり、ここがにじりぐちのような
場所なのだ。この構成は舟入あるいは篷窓(ほうそう:屋根で覆った舟の
窓のこと)といわれています。
忘筌だけでなく孤篷庵方丈から見る庭も同じように風景を障子でトリミング
した切り取られた景が望めるのである。