上の写真は京都の加茂町(現在は木津川市内)にある浄瑠璃寺への参道。
浄瑠璃寺といえば本堂と三重塔が素晴らしい。いずれも国宝でこの小さな寺院が
大好きだという人は多い。華麗なる平安時代の古典建築は建築関係者の間でも
人気が高い。池を挟んで対峙する本堂と三重塔の配置、スケール感など絶品で、
本堂に安置される吉祥天立像は鎌倉時代の木像で重要文化財。誰が言い出したか
知れませんが「日本一べっぴんの天女」だと言われている。
建物や仏像もいいんですが、ぼくはここのアプローチが大好き。両側が緑でフレーミング
され、参道の幅も狭い。対向する時は方がぶつからぬようにちょっと脇に寄らねば
ならないくらい。そのヒューマンスケールが実によろしい。
写真のように雨の日はなお風情が増していい雰囲気なのだ。
こういったアプローチは何もお寺さんに限ってじゃなく、個人の住宅でも公共建築でも
同じ事。もちろん公共施設で一度に大量の人が行き来する場所はそれなりのスペース
が必要になりますが、それでもその場所まで行きつくまでの奥行き感が大事。
シークエンスという言葉で表現されます。連続性の事ですね。折れ曲がったり、レベル
を変化させたり、アイストップに点景やシンボルの緑があったり、幅員を増減したりと。
そういった変化のある空間の演出は身体移動を伴いながら体験される多様な意識の
変化を与え、ドラマティックな展開を見せてくれる魅力があります。
芹沢銈介の家のアプローチは、個人住宅(移築で現在は住居では無い。)レベル
なのでもっと狭い。対向するには45度肩を回転させて避けなければならない。
住宅ならこれで充分なのだ。背丈より高い生垣でフレーミングされ親密感があり、
この奥には何があるのかな?という期待感さえ湧いてくる。
小さな個人経営の食堂のアプローチですが旗竿敷地のアプローチを枕木で歩を作り
(ひと一人が通れる程度)、低木を密植してあります。樹木の緑と赤茶に錆びた鉄板
が補色の関係で互いに存在感を引き立たせているのがよく分ります。
この設計者は建築家・中村好文さんです。
一番下の写真は建築家・宮脇檀さんが設計された姫路書写の里美術工芸館への
アプローチ。公共施設だからそれなりの大きな通路ですが、竹林によるフレーミングで
グッと奥行き感が出ています。ストレートのアプローチで、あまり凝った仕掛けは
ありませんが、途中で小川を渡ったりと体感する変化はあり、ここは建築がチラリと
見えているのがソソルンデスネ!