建築設計で計画案を提案する時、プランは必ずしもひとつとは限らない。
時と場合によっては同時にA案とB案など複数の計画プランを提示することもある。
建築主の要望や意向・好みといったものに忠実に答えたものをひとつ。これは
ファーストプランとでも言いましょうか、ああしたいこうしたい、これが好きあれがほしい
を素直にカタチにしたものだから、そう違和感なく受け入れられる。その真逆で
この土地だったらこんな事もできますよ!という風にその土地のもっている可能性や
リクエストの行間を読むようなセカンドプランがもうひとつ。建築主がもしかしたら
気づいていない事などを明るみにするには有効なことが多い。
計画案を練っていると自然と2つ3つの案が浮かんでくるものだけど、その中で
プロとして一番いいものを提示するのが正しいという考え方もある。
複数案を提示するのは建築主も迷うし、プロとして責任逃れだという意見。
それはそれで正しい。でもここで言う、複数案はそれぞれのプランの長短を提示して
どっちがいいですかと判断を建築主に委ねるのではなく、目的地はひとつだけれど
そこまで行く道程にはいくつかのルートがあるのですよ。といろいろな可能性を
探り出し、示すという意味。
(1本に絞るか、第2、第3を提示するかはほうとうにケース・バイ・ケース。
土地その他の条件や建築主の性格・気質。その段階での自分との関係・・・etc
そして決定するのは提案する建築家の判断。だから違う案も出してほしいと懇願
されても断固提出しない場合だってあるのだ。)
どのルートをどんな歩幅で通ったかで、結構出来あがってくるものは違うような
気がします。
煮詰まりカタチになり建築として立ち上がっていくものは一つだけど
選ばれざるもうひとつのプランも提案する側としては「これも、ええプランやねん
けどな~。」と自己満足的に思う事も多いのである。
ある計画案での二面性
Aプランは広い敷地の中心にコンパクトに
配置し、南と北にそれぞれ広い庭をとる。
平屋の計画だから北庭も言うほど日当たり
の悪い場所ではない。北の庭は順光で
眺めることができるし、花木も自分のほうを
向いて咲いてくれる。広い敷地では有効な
手法だ。
単純明快な切妻屋根で登り梁や母屋を
化粧現しで小屋組みを見せる。
南北に掃き出しの開口を設けるので
風通し、視線の抜け、空間の広がり、
内外の繋がりを確保する。
懐の深い棟近くの部分はロフトを設け
子どもの部屋から利用できるように
考えてみる。
Bプランはこの敷地の特性である南側の
隣地(接道がないため建物が建たない)
の松林を借景に頂き、思い切り建物を
南に寄せた配置案。
コの字のレイアウトで囲われた内庭を
つくり、北庭も広くとる。
パティオ形式はプライベート性が高い外の
リビング空間を作り出し、内外の連続性を
より高めることができる。
基本的に片流れでコの字の屋根を
作っている。屋根葺き材は和瓦を
想定している。(これはAプランも同じ)
どの部屋も中庭を向いて開いており
中庭越しに各室内が連動する。
北庭にも開いたダイニングの部分は
一段下げた折り返しのさしかけ屋根を
掛けている。室内と屋外を繋ぐ部分は
基本的に低く深い軒内空間がほしい。
同じ敷地で同じ要望に応えるための計画案でも随分違ったものになることがある。
どちらが良い悪いではなく、あらゆる可能性を追求することが大切なのです。
下が最初のプレゼンテーションでお見せしたイメージスケッチ