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2009.12.10

お尻で感じる芸術!

イサム・ノグチの名作『ブラックスライドマントラ』
札幌の大通公園西8丁目と9丁目の間に鎮座するこの螺旋の滑り台彫刻を
自分のお尻で滑りたくて、この彫刻がここに設置されてから初めて札幌を
訪れたとき、真っ先にここへ飛んでいった。しかし、その日は朝からあいにくの雨。
雨に濡れた黒い御影石は美しかったが、濡れた石面にお尻を接するとパンツまで
濡れてしまう。
どうしたものかと思案した挙句、芸術とは見るのみならず触れて匂って舐めて
感じるもんだ!と自分に言い聞かせてっぺんに登る。
お尻で滑らなくてもスキーの滑降みたいな感じで足の裏でスルスルっと滑れば
いいかと思い一気に滑ってやった!
しかし寄る年次には勝てません。しりもち着くどころか仰向けにひっくり返りながら
背中でスライド。
濡れた磨きの御影石は想像以上に滑るうえに、この彫刻滑り台、思いのほか
急勾配なんですね。(その辺の児童公園の滑り台とはわけが違います)
そしてみなさん子どもの頃を思い出してください。滑り台を滑り降りたとこって
たいがい土が掘れて雨のときは水溜りになっていますね。そこにまともですワ。
ここもマットみたいなものが敷き詰められているにも関わらず溜まってたんですね。
札幌の大通公園、人は大勢います。「何々、あの人」っていう冷ややかな視線。
いっしょに居た家族は「あの人誰~、わたしら知らんし~」とスーと離れていくし・・・
ほんま格好悪い。後ろ半分雨水に濡れてホテルにチェックインするはめに。
もし僕が公園の設計をするとしたら、滑り台の下は土が掘れないような透水性素材で
舗装し、ドライに仕上ようと思うし、滑り台の彫刻をデザインする事があれば、
もう少し緩やかな滑降面にしたいと思います。
そして『雨の日は危ないから滑らないでね!』というハザードボードをいっしょに
デザインして彫刻の脇にそっと設置したいと思うのです。

 

ブラックスライドマントラ        

           「この彫刻は子どものお尻で磨かれて完成するのです」と
           イサムが言ったブラックスライドマントラ



★ブラックスライドマントラ豆知識
1986年『ヴェネチア・ビエンナーレ』にアメリカ代表としてイサム・ノグチが参加
したとき出展した白の大理石で出来たスライド・マントラが原型。
その黒御影石版であるが、白版より少しやわらかい流線型になっている。
なぜ黒い石を選定したのかというと、北海道の冬を象徴する雪の白との対比を
考えてのこと。サイズも大通公園のスケール感に合わせ、白の2.8mから
3.6mの高さまで大きくしているの。
背後の小さな穴から入り、内部をくり抜いたかのようなの階段をてっぺんまで
登ると、あとは一気に滑り降りる反時計回りの螺旋形。巻貝のようでもある。
地のエネルギーが天に向かうという、地球のエネルギー螺旋を胚胎した
デザインであり、漲ったエナジーは宇宙へ開放されるんですね。そんな彫刻です。
1988年に香川県牟礼で制作。1992年10月に現在の位置に設置されました。
滑り台として子ども達の人気を博し、イサムさんが言ったようにお尻で磨かれ
(時々背中でも?)その完成度を増しています。

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